刑事弁護のスタンダード(弁護士 佐々木良太)

最近,「刑事弁護のスタンダード」について考えることがあります。

ここでいう「刑事弁護のスタンダード」とは,刑事事件を担当した弁護士の活動として一般的にあるべき水準というほどの意味です。

 

刑事弁護に関する代表的な書物には,次のようなことが書かれています。依頼者が犯罪事実を否定している場合はもちろん,そうでない場合も原則的に黙秘を勧めるべきである。黙秘を勧めた以上は少なくとも本人が捕まった当初は本人に毎日会いに行くべきである。捜査機関が作った供述調書に対しては,証拠とすべきではないという意見を述べるのを原則とすべきである。被告人質問はいわゆる先行方式を求めるべきである。法廷で事実を主張したり証拠を議論したりするときは,法廷の中心に立って,原稿を読まずに,裁判官や裁判員の方を向いて行うべきである。これらを行うことこそが,依頼者の利益を最も守ることになると。

私が弁護士になる前に入所していた司法研修所でも同じことを学びました。弁護士になってから受けた研修でも,同じことを学びました。

そして,北パブでも,先輩弁護士は当然のように上記の諸活動を基本としていました。

ですので,私にとっての「刑事弁護のスタンダード」は,上記の諸活動を基本とすることです。

 

しかし,世間一般的に上記の諸活動が当然のものとして行われているかというと,必ずしもそうではないのではないか,ということを最近思います。本人が犯罪事実を否定している場合でも黙秘の助言がなされないことが実際には珍しくはないということや,被告人質問の先行方式もなかなか求められない,ということをしばしば耳にします。また,自分が司法修習生のとき裁判所で傍聴した法廷を思い出してみると,私が見た弁護人はすべて,紙を手に持って,事実の主張や証拠の議論をしていました。

 

もしかしたら,あるべき「刑事弁護のスタンダード」と,実際の一般的な刑事弁護の姿とは,隔たりがあるのかもしれません。

 

私は来年から,あるべき「刑事弁護のスタンダード」が当然のように行われていた北パブを離れ,赴任地に赴任します。

北パブを離れても,「刑事弁護のスタンダード」を常に意識して,そこから目を離さず,まっすぐに向き合っていきたいと思います。そのために,日々の研鑽を怠らず,何が依頼者の利益に最も適うのか,ということを常に考え続けなければならないと思う今日この頃です。

2019年12月27日 9:20 AM  カテゴリー: コラム

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