北パブコラム(第5回):退所にあたって
どんな人にも、子ども時代があります。
誰しもがいくつになっても、子ども時代に経験したことや大人に投げかけられた言葉に、救われたり、傷ついたりすることがあるのではないでしょうか。
周りの大人が子どもをどれだけ大切にしてきたか、真剣に向き合ってきたか、それがその子どものこれからの人生を大きく左右していく、そう言っても過言ではないと、私は思います。
私が付添人を担当したある少年は、両親との関係が悪く、中学時代に施設に入所をしました。
少年は、自分の居場所を見つけることが出来ないまま、施設を出た後、非行を繰り返して1人で生きていました。
弁護士との面会ではいつも笑っていた少年が、涙をこぼしたのは少年院送致を言い渡された審判の時でした。
審判の席に、少年の周りに居たのは、裁判所の職員と付添人だけでした。
これまで、少年の周りにいた大人は、その子にどれだけ向き合ってきたのだろう、どれだけ真剣に向き合って来たのだろう、この時初めて、私はその少年の人生を垣間見た気がしました。
北千住パブリック法律事務所で3年3ヶ月を過ごしました。
弁護士として勤務する中で、色々な境遇の子どもたちと出会いました。事件が終了すれば、そこで弁護士としての仕事は終わりです。しかし、その子の人生はこれからも続いていく、私はただ、その子の人生がこれから幸せであるようにと祈るだけでした。もう少し違う形で子どもたちに関わることは出来ないか、そんな思いを抱くようになりました。
本年4月1日から、児童相談所で勤務する機会を頂くことが出来ました。断片的にではなく、継続的に子どもを支援していく職務に挑戦できることに喜ぶ一方、児童福祉の世界にどれだけ法律家が貢献できるのか、不安を覚えることもあります。
当事務所で得た経験を生かし、微力ながらも、児童福祉と法律家の分野の架け橋になれるよう、尽力していく所存です。
2015年3月31日 10:34 AM カテゴリー: コラム