北パブコラム(第6回):「法曹一元と弁護士任官」
「法曹一元」という言葉をご存じでしょうか。
この言葉は、いろいろな意味で使われているものですが、現在では、裁判官として法曹生活に入った者だけが裁判官の職を占めるいわゆるキャリア・システムに対し、裁判官は、原則的に法律職従事者、特に弁護士から選ばれるべきものとする考え方をいう場合が多いようです。
そもそも、裁判所法は、下級審の裁判官(判事)を、弁護士や検察官等の法律職に10年以上従事していた者の中から任命するものとしており、法曹一元とまではいかなくとも、裁判官となる者の多様性、多元性を予定していたものですが、実際の運用としては、司法修習生の修習を終えた者が直ちに判事補として裁判所に採用され、その判事補が10年を経て裁判官に任命されるというキャリア・システムが確立されており、判事補から任命された裁判官が現役の裁判官の大半を占めるという状態になっているのです。
弁護士会は、このようなキャリア・システムが「官僚司法」を生み出しているとして批判し、「市民の司法」を実現するためには、法曹一元こそが必要であると主張して、判事補制度の解消を目指して運動を展開してきました。
先の司法制度改革審議会においても、この点が議論となり、そのとりまとめでは、法曹一元制度自体は採用されませんでしたが、裁判官となる者の多様性、多元性を予定する裁判所法の趣旨の実質化を図るためには、弁護士が裁判官となること、すなわち、弁護士任官を強力に推進する必要があるとされました。
当事務所は、主として、同じく司法制度改革審議会において議論され、導入の道筋がつけられた被疑者国選弁護や裁判員裁判の導入といった刑事司法の改革に対応するために、刑事弁護対応型の公設事務所として、東京弁護士会によって設立されたのですが、同時に、弁護士任官の推進についても、その目的の1つとして掲げていました。
そして、当事務所が設立されて12年目となる本年4月1日より、私は、10年半の弁護士生活に別れを告げ、当事務所初の弁護士任官者として、裁判官としての人生を始めることになりました。
これまでの弁護士としての経験がどこまで活かせるかは分かりませんが、今後は、一人の裁判官として、当事務所で学んだことを胸に、微力ながら、よりよい司法を実現するため尽力していく所存です。
2015年3月31日 4:00 PM カテゴリー: コラム