北パブコラム(第8回):「認定落ち」事件について
■「認定落ち」って?
刑事事件の関係者では「落ちる」という言葉は、いろいろな意味で使われています。
有名な「半落ち」という小説があります。横山秀夫さんが書いた小説です。ここでは「落ちる」=「自供する」という意味で使われています。
「赤落ち」という言い方もあります。これは「刑務所に行く」という意味で「落ちる」という言葉が使われています。
では「認定落ち」というのはどういう意味でしょうか?
簡単に言いますと、「検察官が主張した事実が認定できなかった」、つまり、弁護側の主張が判決で一部でも認められた、ということを言います。
■「認定落ち」とは、具体的にどういう場合か?
例えば殺人罪で起訴された事件で、「殺意」はなかった、という認定(判決)になる場合があります。殺意がなかったので「殺人罪」から「傷害致死罪」になる場合等も「認定落ち」です。
蹴ったり殴ったりして怪我をさせた、という傷害の事件で、「僕は殴ったことは間違いありませんが、蹴ったりはしていません」という場合はどうでしょうか?
そのような主張が判決で認められて、「殴ったが蹴ってはいない」とされた場合も、「認定落ち」と言われます。
■やったことの責任は取るべき。でも、やったこと以上の責任は取らせるべきではない。
私たちが刑事事件の弁護人となった場合、依頼者である被疑者・被告人の方たちの言い分を通すために、全力を尽くします。
「確かに人を殴ってしまった、でも…」、「確かに物を盗んでしまった、でも…」、「確かに人を殺してしまった、でも…」。
こんな場合は考えられませんか?
実際に、犯罪を犯してしまう人はそう多くはないと思います。でも皆さんの生活の中でみたらどうでしょうか。
奥さんと「今日は早く帰る」という約束を破って、お酒を飲んで帰宅時間が遅くなってしまった。「でも、社長に誘われたから仕方なかったんだよ…。できるだけ早く帰ろうと思って、11時には帰ってきたじゃないか!」とか、そういう場合はあると思います。
私たちは、依頼者が持っているこの「でも…」という事情を大切にしたいと思っています。
やってしまったことの責任は取るべきでしょう。でも、やったこと以上に責任を取らされることも、おかしなことではないでしょうか。
■実際にどのような場合があるのでしょうか?
私自身がこれまで獲得できた「認定落ち」判決で、3つ例を挙げます。
故意に人を殺したとして強盗殺人の罪に問われて裁判になった人について、「強盗致死」に「認定落ち」した事件がありました。殺意がなかったという結論でした。
また、裁判で殺人未遂罪と、殺人のための道具を作った罪に問われた事件で、殺人未遂は認められるけど、その道具作成の責任は認められない、という「認定落ち」事件もありました。
電車内で眠っている女性のスカートをめくって、さらに太ももを触ったとして罪に問われた事件では、スカートをめくったことは間違いないけれど、太ももは触っていない、と認められて「認定落ち」した事件もありました。
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私たちの事務所に所属し、またかつて所属していた弁護士が獲得してきた「認定落ち判決」は、無罪判決の数よりも多く、たくさんの事例があります。
もちろん、「認定落ち」はしたけれど、依頼者の言い分が100%認められた結果ではない、ということもあります。言い分の一部は認められたけど、不十分だった、ということです。
でも、仮に判決では一部しか認められないとしても、依頼者の言い分を裁判所に認めてもらうために、私たちは全力を尽くします。
その結果、得られた「認定落ち」判決は、無罪判決と同様、私たちの誇りでもあります。
今後は「認定落ち」判決についても、どのような事件があったか、できる限りご紹介していきたいと思っています。
ご期待ください。
2015年4月30日 1:57 PM カテゴリー: コラム