刑事裁判で、被告人が、被害者に対する謝罪や、罪を犯してしまったことの反省を述べることがあります。
では、裁判官や裁判員に向かって、「謝罪」や「反省」の言葉を述べれば、それだけで刑が軽くなるのでしょうか?
結論から言うと、多くの場合、「言葉だけではダメ」です。
それは何故か。以下、ご説明します。
まず、謝罪についてですが、被害者にとっては、謝罪の言葉の内容どうこうより、受けた被害が少しでも回復されることが重要であることが一般的です。
したがって、例えば傷害罪であれば、傷害の治療費を支払っているか、詐欺罪であれば、だまし取った金額を弁償しているかなど、被害者が受けた損害がどれだけ回復されているかの方が謝罪の言葉よりも断然重要です。
損害賠償の努力をせずに、しかも賠償できる経済力等はあるのに、これをせずに土下座しようが号泣しようが、裁判官や裁判員にはまず響きません。
それどころか、「自分は何の負担もせずに、刑を軽くしようとする身勝手な人」と見られて、むしろ悪い情状と評価される可能性すらあります。
逆に、損害を賠償しようとできる限りの努力をしていれば、仮に全額賠償できなかったとしても、「真摯な努力」をしているとして、相当程度良い情状として評価されることが多いです。
例えば、被害者の損害は100万円ですが、被告人が自分の貯金を絞り出しても、金融機関や身内、友人知人から借金しても、どうしても80万円しか用意できなかったとします。
全額ではないので、被害者は示談してくれず、受け取ってもくれないかも知れません。しかし、今できる限りの努力をしたと評価されれば、「真摯な謝罪の意思がある」と評価され、良い情状とされることが多いでしょう。
反省の場合も同じで、裁判官は、「反省しています。もう二度とやりません。」という言葉だけでは、ほとんど評価しません。何故なら、起訴されて罪を認めている人なら、ほぼ全員同じことを言うからです。
「反省だけならサルでもできる」という昔のCMがありましたね(平成生まれの方はわからないかもしれませんね…。)。
裁判官や裁判員に評価してもらうためには、「犯罪に至った原因を分析し」「その原因を除去する対策を講じて実行している(あるいは実行できる体制が整っている)」ことを示す必要があります。
例えば、路上生活で、その日食べる物にも困って万引き(窃盗罪)をしてしまったという事件で、「反省してます。強い決意で、もう二度と万引きはしません!」と法廷で誓ったところで、路上生活から脱しないとほとんど意味はありません。
ですので、このようなケースであれば、生活保護を受給して住居と収入を確保するなどの対策を講じ、「もう食べる物には困らないので、万引きはしません。」と述べれば良い情状となるでしょう。
以上のとおり、「謝罪」と言っても具体的な行動が伴わないといけませんし、「反省」と言っても原因の分析・再発防止策が伴わないと説得力がありません。
また、上記で例示したように、具体的にどのような行動等をおこなえば良い情状として評価されるかは、事件の類型やご本人の状況によって異なります。
したがって、せっかくの「謝罪」や「反省」を無駄なものにしないためには、なるべく早く弁護士にご相談いただくことが肝要です。
示談や、反省に限らず、刑事事件のお問い合わせの際は、こちらからご連絡ください。
↓
http://www.kp-law.jp/inquiry/index.html
2020年1月20日 9:24 AM カテゴリー: コラム
弁護士が入所いたしましたのでお知らせいたします。
前原 潤 弁護士(72期)
馬淵 未来 弁護士(72期)
2020年1月7日 12:49 PM カテゴリー: 弁護士入退所のお知らせ
佐々木良太弁護士が昨年12月末で退所いたしましたのでお知らせします。
佐々木弁護士は法テラス函館法律事務所へ移籍しました。
2020年1月6日 9:48 AM カテゴリー: 弁護士入退所のお知らせ
2020年1月・2月の法律相談の日程は次のとおりです。
土曜・夜間法律相談も行いますので、ぜひご利用ください。
いずれも電話での事前予約をお願いします。
毎週月曜日 (1)15:30~ (2)16:15~
毎週火曜日 (1)10:00~ (2)10:45~
毎週水曜日 (1)18:00~ (2)18:45~ ※夜間法律相談
毎週木曜日 (1)15:30~ (2)16:15~
毎週金曜日 (1)13:30~ (2)14:15~
(但し、祝日は除く。)
毎週土曜日 (1)10:00~ (2)10:45~
※突然逮捕された場合の刑事事件など、緊急の場合には、上記以外の時間で対応できる場合もございますので、お問い合わせください。(ただし、所属弁護士のスケジュールが全てうまっている場合など、お受けできないこともございますので、あらかじめご了承ください。)
【ご予約・お問い合わせ】
03-5284-2101(平日午前9時30分~午後4時30分)
※その他、法律相談・事件のご依頼についての詳細は、「初めてご相談される方へ」をご覧下さい。
2020年1月6日 9:38 AM カテゴリー: 法律相談のご案内
最近,「刑事弁護のスタンダード」について考えることがあります。
ここでいう「刑事弁護のスタンダード」とは,刑事事件を担当した弁護士の活動として一般的にあるべき水準というほどの意味です。
刑事弁護に関する代表的な書物には,次のようなことが書かれています。依頼者が犯罪事実を否定している場合はもちろん,そうでない場合も原則的に黙秘を勧めるべきである。黙秘を勧めた以上は少なくとも本人が捕まった当初は本人に毎日会いに行くべきである。捜査機関が作った供述調書に対しては,証拠とすべきではないという意見を述べるのを原則とすべきである。被告人質問はいわゆる先行方式を求めるべきである。法廷で事実を主張したり証拠を議論したりするときは,法廷の中心に立って,原稿を読まずに,裁判官や裁判員の方を向いて行うべきである。これらを行うことこそが,依頼者の利益を最も守ることになると。
私が弁護士になる前に入所していた司法研修所でも同じことを学びました。弁護士になってから受けた研修でも,同じことを学びました。
そして,北パブでも,先輩弁護士は当然のように上記の諸活動を基本としていました。
ですので,私にとっての「刑事弁護のスタンダード」は,上記の諸活動を基本とすることです。
しかし,世間一般的に上記の諸活動が当然のものとして行われているかというと,必ずしもそうではないのではないか,ということを最近思います。本人が犯罪事実を否定している場合でも黙秘の助言がなされないことが実際には珍しくはないということや,被告人質問の先行方式もなかなか求められない,ということをしばしば耳にします。また,自分が司法修習生のとき裁判所で傍聴した法廷を思い出してみると,私が見た弁護人はすべて,紙を手に持って,事実の主張や証拠の議論をしていました。
もしかしたら,あるべき「刑事弁護のスタンダード」と,実際の一般的な刑事弁護の姿とは,隔たりがあるのかもしれません。
私は来年から,あるべき「刑事弁護のスタンダード」が当然のように行われていた北パブを離れ,赴任地に赴任します。
北パブを離れても,「刑事弁護のスタンダード」を常に意識して,そこから目を離さず,まっすぐに向き合っていきたいと思います。そのために,日々の研鑽を怠らず,何が依頼者の利益に最も適うのか,ということを常に考え続けなければならないと思う今日この頃です。
2019年12月27日 9:20 AM カテゴリー: コラム