北千住パブリック法律事務所
メンバーインタビュー企画【第4弾】

2010年12月に弁護士登録後、北パブに入所。2012年12月に法テラス秋田に赴任。2016年3月に法テラス多摩に赴任後、2019年1月に北パブに戻ってきました。

伊藤 荘二郎 Ito Sojiro 

ー弁護士になり北パブから秋田・立川へー

弁護士を志したきっかけを教えてください!

 うーん、実は…“とりあえず”って感じだったんですよね(笑)。人を助ける仕事をしたいという漠然とした思いはあって、たまたま大学で法学部に入りましたが、普通の会社に就職するイメージも湧かなくて。じゃあ法曹かな?って。そんな消極的な動機で最初は始まりました。

法曹三者の中で弁護士を選んだ理由は?

 裁判官もちょっと考えました。でもやっぱり、困っている依頼者を直接助けられるのは弁護士かなと。検察官については、検察修習に行ったときに「あ、これは無理だな」と思いました。気の毒な身の上の被疑者がいて、示談してあげられないかなって思って担当検事に相談したら、「検察は示談あっせん機関じゃない」ってピシャリと…。検察は自分には合わないと思いました。

弁護士1年目から北パブに?

 はい、元々スタベン(法テラススタッフ弁護士)志望でした。ロースクール時代に法テラスの人の話を聞く機会があって、「金儲けのことを気にせずに、人助けができる」という趣旨の話だったのですが、「自分がやりたいのはこれだ!」と思いました。そして、司法修習中に北パブにご縁があって、養成事務所として北パブに入所することになりました。

北パブのあと、赴任地も経験されたとお聞きしました

 はい、2011年に北パブに入って、養成期間を経て、秋田に3年、立川に3年、計6年。異動のタイミングや前任者との兼ね合いで、最初は秋田になりました。しかし、秋田への異動が決まったとき、ちょうど妻は妊娠中で…単身赴任となりました。正直、妻は「聞いてないんだけど!?」って感じだったと思います(笑)。

家庭との両立は大変でしたか?

 とても気を使いました(笑)。研修などで東京に戻る機会をできるだけ確保して、月1回くらいは実家に帰って、2、3日家族と過ごしてからまた秋田に戻る感じでした。お土産はいぶりがっこや稲庭うどんを買ってくると喜ばれるので、それと秋田の地酒をよく買って帰りました。たまに帰ると、そのたびに子どもが成長していて、嬉しいやら寂しいやらという心境でした。

秋田での業務はどうでしたか?

 依頼者層は似通っていました。事件の数は北パブに比べると少ないですが、裁判員裁判を受任する機会が多く、それなりに充実していました。それ以外は扶助相談での債務整理、離婚などの家事事件が中心でした。出張相談も多く、北は大館から南は湯沢まで…いろんなところに行きました。雪の時期はブリザードで道に迷うこともあって、大変でしたね。

その後、立川へ異動ですね

 そうです。立川にある法テラス多摩に赴任しました。実家から通える場所だったので、ありがたかったです。多摩では被疑者国選の配点が月2件あって、連日のように接見と公判準備をしている感じで、刑事事件中心に充実した日々でした。

ー法テラスから北パブへー

北パブに戻ってきたきっかけも教えてください!

 理由はいくつかありますね。一つは、法テラスの中ではやれる業務が限られているので、もっと広く弁護士として活動したいなと思いました。一般民事や刑事私選、後見などにも手を広げたい気持ちがありました。それと、北パブは昔お世話になったところですし、居心地も良いし、事件も多くて楽しい。あと、異動がないというのも大きいです。秋田から戻った後、娘に「小さい頃のパパとの思い出がない」と言われたことがあり、けっこうショックでした。もう単身赴任はしたくないと思いました(笑)。

ー仕事とプライベートのバランスー

趣味を教えてください!

 散歩と温泉ですね。休日は、コンビニでお茶を買って、気ままに歩くのが習慣です。歩いていると、頭の雑味がとれてすっきりして、身体が軽くなるのが心地よいですね。仕事のことを忘れて、街並みや樹々を観ながら、風を感じながら、川のせせらぎや鳥のさえずり虫の声に浸りながら歩いていると、無になります。といっても、気がつけば事件のことを考えていることが多いのですが…。ふと「こういう主張もできるのではないか」などと思いつくこともあります。そういうときは、アイデアが逃げてしまわないように、すぐにスマホのリマインダーにメモして、それから頭を散歩モードに戻し、家に帰ってから見返すようにしています。面白そうな小路があれば、ふらっと入ってみると、思わぬ発見をすることもあり、これも散歩の楽しみの1つですね。秋田にいたときも、無人の日本海の砂浜を独り散策したものでした。Googleマップがあればたいていのところは行けるので、便利になりましたね。
 そして、温泉、といっても地元の健康ランドのようなところですが、これも欠かせません。週末は散歩がてら温泉に行きます。歩き疲れて、ほどよく気だるくなったところで温泉に入るのがポイントですね。熱い源泉が身体に染み込み、ジャクジーでほぐしてから、ぬるい炭酸泉につかっていると、身体の芯まで柔らかく、軽くなる感じがします。温泉につかりながらこの1週間を振り返り、これからの仕事や生活に思いを馳せて、今日も温泉に来れたことに感謝する。そして、風呂上がりには施設のレストランで、まずはビールに枝豆、それから季節の魚と天ぷら蕎麦に純米酒を堪能する。特に冬場は、寒ブリのカマ焼きが絶品ですね。来週も頑張ろうかという気持ちになれます。

今後、チャレンジしてみたいことはありますか?

 今やってみたいのは農作業ですね。自宅の近くにH菜園という体験農園があって、通勤の途中に、春夏秋冬、色々な野菜が育っていく様子を日々見ています。トマトやキュウリ、トウモロコシ、スイカなどが雑多に育っていく光景を見るのが楽しく、ナスが朝陽を浴びてツヤツヤ輝いているのも、何とも美しいですよね。いつも見ているうちに、自分でも作ってみたいと思うようになりましたが、農園の利用枠に空きがありませんでした。自分で枝豆やナスを育てて、採れたてを肴にビールを飲みことを夢想しながらずっと待っていましたが、最近ようやく空きが出たので、来年からは週末の楽しみが一つ増えそうです。

ー刑事事件と精神障害に向き合うー

精神障害を持つ方の刑事事件に積極的に取り組んでいらっしゃる印象ですが、この分野に関心を持たれたきっかけは何ですか?

 精神障害が問題となる事件に関心を持つようになったのは、法テラスで国選弁護を担当していた頃です。特に、責任能力を争う事件や、精神鑑定が行われる事件に携わる中で、法テラスの支援室の先生方からアドバイスをいただきながら、色々と試行錯誤しました。精神鑑定書は難しいですが、鑑定人や協力医から話を聞き、ストーリーを組み立て、事件の本質を解き明かしていく過程が非常に面白いです。

精神障害を持つ依頼者被告の刑事弁護で特にやりがいを感じる瞬間はどんな時ですか?

 それは、起訴前鑑定が不十分であるときに、その問題点を指摘して再鑑定を実現し、その結果、心神喪失や心神耗弱の主張が認められたときですね。依頼者が釈放されて、その後も相談に来てくれたりすると、弁護人として自分の役割を果たせたと実感します。刑事弁護を通じて、依頼者の人生が前に進むことに少しでも役立てたと感じる瞬間が、本当にやりがいを感じます。

ー新人の頃を振り返ってー

新人の頃と今の北パブの違いについて教えてください

 立場が全然違いますね。新人の頃は自分が一番下で、分からないことだらけで、毎日起案に追われて崖っぷちのような日々でした。今は気づけば中堅の上の方になっていて、余裕は出てきましたが、当時の自分を思い出して比べてみると、最近の若い人たちは優秀でキラキラしていて、すごいな、頑張ってるなと思うことが多いです。事務所自体は特に変わった感じはしないですね。雰囲気は、昔よりもさらに柔らかくなったような気がします。

新人へのアドバイスがあれば教えてください。

 新人には、とことん事件のことを考えて、事件にどっぷり漬かってほしいと思っています。先輩からしたら必要ないのではと思えるようなことであっても、新人だからこそ、それが成長につながり、大きなヒントを得られることもあると思います。
 私も新人の頃、とある否認事件で、どうしても腑に落ちないことがあり、必要なのかと不審に思われるほど頻繁に接見に行き、話を聞きまくっていました。あるとき依頼者から「マレー語のコーランが欲しい」と頼まれて、長い勾留生活は辛いよねと思い、あちこち探し回って、それに近いものを手に入れました。依頼者は喜んでくれましたね。コーランの導きでしょうか、後日接見に行ったとき、依頼者が「今まで先生に話せていなかったことがあります」と言いだして、ずっと隠していた秘密を打ち明けてくれました。それが最後のピースとなって、事件の真相が明らかになり、ケースセオリーが完成しました。
 振り返ってみて思うのですが、何がきっかけで事件が動き出すかは分からないし、その試行錯誤が自分の弁護活動のスタイルを形作るのだと思います。だからこそ、新人には、先輩の顔色を気にせずに、やりたいことをとことんやってほしいですね。もちろん、起案の期限も守ってほしいですが…(笑)。

最後に、仕事に対する思いを教えてください!

 新人の頃は日々の仕事についていくので精一杯でしたが、最近は、デジタルツールを活用して、複数の事件全体を効率的に回せるようになり、余裕ができてきました。ただ、だからこそ、馴れすぎずに、初心にかえって、1件1件しっかり調べ、考え、起案するという姿勢を忘れないようにしたいと思います。弁護士は、依頼者から真相を聞くことができるのですから、中途半端に分かったつもりにならず、とことん話しを聞き、考え続け、真実に辿りつくことに貪欲でありたいと思っています。

伊藤先生、インタビューにご協力いただきありがとうございました。

(インタビュアー:酒田芳人、宮城知佳、齋藤彩音)