北パブコラム(第16回):同居のご親族との付き合い方

 年金で生活されている高齢の方がその無職のお子様、といっても年の頃は中年ですが、そのお子様が幼少の頃から現在にいたるまで長年の間、親である相談者の方と共に生活していることがあります。それだけならいいのですが、相談者の方が長年、お子様にお金を求められるままに渡したり、借金を代わりに支払ったりしていて、ある時、「これ以上は渡せない。」などと子供に告げると、その途端に、子供が相談者の方に暴力を振るい、あるいは、暴言を吐く等してしまうということがあります。相談者の方は、「暴力をふるう等した子供とは、もう一緒に住み続けられない」ということで、弁護士の所にご相談にみえます。
 ご相談者の方の配偶者(夫など)は、既にお亡くなりになっていて、ご自分の生活は年金で賄い、子供に支払うお金は夫の遺産等から出してきたけれども、その遺産等が残りわずかとなり、このまま子供に支払い続けてはいけないなどと思って、子供に伝えるのですが、子供はなかなか納得ができないのでしょうか。
 このような方がもし、ご親族にいらっしゃって、相談をされた場合、皆様であればどのように対応されますか?
まず、必要なことは、相談者の身の安全を確保することです。多くの場合、警察に相談の上、弁護士に相談に来られます。緊急一時的に身を寄せる場所として区役所等の紹介で、いわゆるシェルターと呼ばれる避難所に宿泊されていることもあります。けれど、もし、相談者がご自宅から相談に見えたのであれば、相談者にその身の安全を確保することが最優先であることをお話しし、納得して頂いた上で転居先等を探すことになります。
 シェルターから相談に見えている場合であっても、安心はできません。シェルターは一般的には2週間程度で、退出を求められるからです。そして、ご自宅は、子供に知られていて、戻った場合、相談者の身に危険が及ぶ可能性があります。そこで、子供に知られていない新たな家を探す必要があります。
 資金が十分にある場合は、高齢者向けの分譲マンション等の購入を検討されてもよろしいでしょう。新たに賃貸借契約の締結を希望される場合、不動産会社で物件を探して頂きます。これまでは、連帯保証人が必須とされている不動産が大半でしたが、この頃は、保証会社を利用することにより、連帯保証人を求められない物件もあります。ただ、高齢の方の場合、高齢であることを理由に契約を断れてしまうこともあるようですので、あらかじめ不動産業者に確認してから、店舗に赴くとよいでしょう。
 身の安全が確保できたら、次に必要なことは、当面の生活に必要な現金、預貯金通帳・キャッシュカード、健康保険証、医師の処方薬、お薬手帳等を確保することです。逃げる時に、このような貴重品等を持ち出すことができなかった場合は、再発行等の手続をとることになります。着の身着のままで警察へ逃げた場合等は、どうしても必要な上記貴重品等を取りに戻るため、警察が自宅まで同行してくれることもあります。ただ、原則としては、逃げた後、再び戻ることは難しいと考えて頂き、個人的にとても大切なものがある場合等は忘れずに持ち出して頂きたいところです。
 当面の生活費がどうしても準備できず、生活の目途が立たないという場合は、区役所等の自治体に相談等して、生活保護の申請等を検討します。生活保護は、働く意欲があって、そのための求職活動をしているか、これから始めるところだけれども、申請の時点では所持金が1か月の生活費にも満たない程度しかない場合に申請できます。生活保護を申請しようとしても、自治体の対応によっては、なかなか申請できないこともあります。そのようなときは弁護士が同行して一緒に申請をすることもできます。
 相談者の方の生活の見通しが立ったら、相談者の方の意思を子供に明確に伝えることが必要です。何ができて、何ができないのか、あるいは、ここまではするけれど、それ以上はしないなどです。今後、一切の連絡を絶つという意思表示もあり得ます。ただ、相談者の方も環境が突然変わりますので、必ずしも強固な意志を持たれている方ばかりではありません。子供のことを心配する気持ちがなくなったわけでもありません。そのため、あれもしてあげたい、これもしてあげたいという気持ちもあります。そんな中で、子供のためにご自分ができることと、できないことをゆっくり考えて頂いて、自分の意思を明確にして頂いてから、子供にそれを伝えます。弁護士が事件を受任していれば、弁護士から子供に連絡をしますので、依頼者(相談者)の方が直接連絡をする必要はありません。依頼者の方が子どもに直接連絡をしたくなることも出てくるかもしれませんが、できるだけ控えた方がいいでしょう。
 子供との連絡を絶つとなると、いざという時のお葬式やお墓についても、どうするのかを考えておく必要があります。ご希望の宗派やお寺がある場合は、生前にその準備をしておきたいところです。お墓についても、子供が守っていってくれそうにないのであれば、永代供養をお願いするという方法もあります。それらも含めて、万一のことがあったときに備えて、遺言を作成しておくことをお勧めします。
 家族との争い事はないに越したことはありませんが、もし、そのような争いになってしまった場合でも、弁護士が間に入ることで、直接の言い合い等を避けることができます。家族と言い争わなければいけないことはとてもつらいことですので、そのようなときは、弁護士にご相談ください。
 

弁護士 本間 博子

2016年2月12日 10:00 AM  カテゴリー: コラム