北パブコラム(第21回):トラブルをどこに相談していいのかわからないあなたへ(弁護士 鈴木 加奈子)

 私たちの事務所は、毎年行われる足立区の8士業による「よろず無料相談会」に参加しています。今年は、11月5日(土)13時から、足立区勤労福祉会館(綾瀬プルミエ内)にて開催されます。詳しくは、当事務所までお問い合わせください。

 「士業」(しぎょう)という言葉は、聞きなれない方も多いかと思います。士業とは、〇〇士という名称の専門資格を有する職業の俗称です。「さむらい業」ということもあります。 今回の相談会には、行政書士、建築士、司法書士、社会保険労務士、税理士、土地家屋調査士、不動産鑑定士、弁護士(あいうえお順)の8つの士業が参加します。

 各士業の中には、名称を聞いても、どんな仕事をするのかピンとこない専門家もあるのではないでしょうか。

そこで、相談会でも例年相談件数の多い相続の場合を例に、それぞれの士業にどのような相談ができるのか、ご説明します。

 

 Aさんが亡くなったとしましょう。Aさんの相続人は、配偶者と子供2人の合計3名だったとします。3人の相続人で話し合いをして、Aさんの遺産の分割について特に争いはなく話し合いがまとまったとします。このように遺産分割について争いがなければ、その内容を行政書士さんに依頼して、遺産分割協議書を作成し、その後の遺産分割手続(預貯金の解約など)をすすめることができます。

 Aさんによって生計を維持していた配偶者は、遺族年金がもらえるかもしれません。遺族年金をもらう要件を満たしているのかどうかよく分からなければ、社会保険労務士さんに相談することができます。仮にAさんが職場で仕事中に亡くなられた場合、労災保険からの給付が受けられるかも知れません。労災について、社会保険労務士さんに相談することも可能です。

 遺産の中に、不動産があった場合は、司法書士さんにお願いして相続登記をすることになります。Aさんが会社の役員をしていた場合は、役員変更の登記を司法書士さんに依頼することもできます。

 Aさんの遺産の評価額によっては、相続人3名が相続税を支払うことになります。相続税を負担しなければならないのか、負担するとしたらいくらになるのか、税務署への申告はどうしたらよいのか、税金については、税理士さんに相談して下さい。

 残念ながら、3人の相続人で話し合いがまとまらなかった場合、遺産分割でもめてしまった場合は、弁護士に相談して下さい。裁判所で遺産分割の調停を行ったり、裁判を行ったりする必要がでてくることもあるでしょう。

弁護士が代理人として交渉や調停をはじめたら、Aさんの遺産である不動産がいくらなのか、相続人間でもめてしまうことがあります。そんな時は、不動産鑑定士さんにお願いして、不動産の資産価値を評価してもらうことになります。

 遺産である不動産の分け方を争っているときに、相続人である自分がある土地を相続した場合に、その土地上に自宅を建てることはできるのだろうか、どのくらいの大きさの自宅が建てられるのだろうか、自宅が建てられないなら土地を相続してしょうがないのだけどといった問題が生じることも考えられます。その場合は、建築士さんに相談して下さい。

 建築士さんに相談して、自宅も建てられることが分かり、不動産鑑定士さんの評価をもとに、代償金(不動産を取得しない相続人と取得する相続人との調整のために支払われる金銭)の額についても相続人間で話がまとまったとしても、司法書士さんにお願いして土地の相続登記をしようとしたら、隣の土地所有者との間の土地の境界(筆界)がわからないということがあります。こんなときは、土地家屋調査士さんに相談して、隣の土地所有者の立ち合いのもと、土地の境界(筆界)を特定することになります。Aさんの遺産である大きな土地を2人の相続人でわけて相続することになれば、分筆登記が必要になります。土地家屋調査士さんに依頼して、分筆登記のために土地を測量してもらうこともできます。

 

 このように相続にあたり、さまざまな問題が発生し、それぞれの分野の専門家に相談しなければならないという場合も考えられます。

 弁護士のところに相談に行ったら、税金は税理士さんのところに相談に行って、登記については、司法書士さんに相談に行くことになりと大変面倒なことになります。もちろん各士業で重なる分野もあり、ある程度の相談には対応したり、士業間の連携を深めて、相談者の方があちこちいかなくても良い様にと考えていますが、「餅は餅屋」、その分野の専門家に相談するのが一番ではあります。

 

 そこで、各分野の専門家が一同に集まって、みなさまのご相談に対応しようというのが、8士業による「第7回 よろず無料相談会」です。相談される方は、あちこちの専門家に相談して回る必要がなく、1回で関連する各分野の専門家に相談することができるのです。もちろん、相談内容は相続問題に限られませんし、各士業が対応可能な相談内容も前述のものに限られるわけではありません。

 11月の相談会は、足立区の共催で行われるため、対象を足立区在住・在勤・在学の方に限っていますが、同様の士業合同による相談会は、各地で開催されています。どこに相談したらよいか迷っている方、一度相談に行ってみてください。

 

弁護士 鈴木 加奈子

 

 

 

2016年10月19日 3:03 PM  カテゴリー: コラム

この記事をシェアする

Facebook Twitter