北パブコラム(第24回):外国映画から読み説く法律の世界① ~イタリアでは離婚が出来ない?~(弁護士 石田純)

 外国映画を観る楽しみの一つとして、単に物語を楽しむだけでなく、そこに描かれているその国、その国の「生活」を感じることがあると思います。そして、皆さんはあまり意識されないかもしれませんが、「生活」の影には「法律」が潜んでいることが多いので、外国映画を観ているうちに、様々な国の法律を知ることができます。そこで、これから、不定期に、外国映画から法律というものを考えてみたいと思います。

 

 「結婚」という制度が実は国や地域によってかなり制度が異なるということと同様に、「離婚」についても国によって大幅に制度が異なっています。

その中でも、キリスト教のカトリック系の考え方が強い地域では、離婚することが認められていないと言うような話を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。そして、そのような国の一つとしてイタリアが挙げられることも多いようです。

そのような情報が広まった理由のひとつとして、ある映画があげられます。それは、(日本では特に「鉄道員」「刑事」などで有名な)イタリアの映画監督であるピエトロ・ジェルミが1961年に監督した「イタリア式離婚協奏曲」です。この作品は、法的に離婚が認められていないことから、夫が、妻に対して不貞をするように仕向け、名誉のために殺害したことにしようと計画する話です。一見シリアスな話ですが、実際には軽妙な語り口で、喜劇として、おもしろおかしく演出されています。なお、ピエトロ・ジェルミは、その後、同様のテーマで「誘惑されて捨てられて」という映画も作っています。

 

 映画の影響かどうかは分かりませんが、イタリアでは、その後、1970年に「婚姻解消の諸場合の規律」という法律が制定され、一定の条件を満たした場合にのみ裁判によって離婚することが認められるようになりました。ただし、その場合でも裁判所が認定した別居期間が3年以上経過していることが要件となっており、かなり厳しい要件となっていました。その後、2014年から2015年にかけて、離婚手続きが簡略化し、かつ、別居期間が場合によっては半年でも良くなったことから、2015年の離婚件数が8万件を超え、前年比57%増となったということです。

 

 日本においては、協議離婚と裁判所を介して行う離婚が存在しますが、当事者が合意すればその理由は問わないなど、離婚について比較的寛容な制度となっているようにも思われます。

 しかしながら、相手が離婚に同意しなければ、離婚が認められるのは不貞行為や悪意の遺棄(「一切生活費を支払わない」など)といった理由またはそれに匹敵するような重大な理由が必要とされており、そう簡単に離婚が認められるともいえません。

 そのようなことも含めて、離婚の御相談をお受けしていると、「相手が言うのだから離婚しなければならない」、「3年別居したら必ず別れることが出来る」などと、離婚が出来る/出来ないという入口の段階で、間違った知識を持った方も多くいらっしゃいます。

弁護士に相談をすれば全てが解決するというような話ではありませんが、良くも悪くも人生の一大事である「離婚」、一人だけで悩んでいるようであれば、専門家に相談されることをお勧めします。

弁護士 石田純

2017年4月5日 12:00 AM  カテゴリー: コラム

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